彼女の笑顔を見てホッとした私は、腹の奥底から込み上げてくる感覚に、口を大きく開ける。

「ふわぁぁぁ」

我ながら大きなあくび。

そういえば私は松野のせいで、今日は寝不足なのである。

私はタオルを枕にして床に寝そべった。

「あ、松野。あれ、読んだよ」

「え? あれ?」

松野は私を見下ろし首をかしげる。

「隣の山田くん」

「ああ! さすが先生、早いですね」

「まあね」

おかげさまで、あんまり眠れなかったけど。

「どうでした?」

「確かにところどころ誤字はあったし、言葉が間違ってるところもあったけど、面白かった。3回泣いた」

まさか素人(ではないかもしれないが)が書いた小説に、こんなに心を揺さぶられるなんて思ってもみなかった。

ウェブ小説をナメていた。

ネット社会はすごい。

「先生、すごく眠そうですね。もしかして、遅くまで起きて読んでたんですか?」

「うそ。寝不足、顔に出てる?」

「はい、とても」

私としたことが、ぬかった。

仕方ないじゃん、今日は朝イチで松野がいなくなったと聞いて、鏡とかほとんど見てないし。