可愛くない。

全然可愛くない。

彼らに出会ったとき、私はまずそう思った。

どうしてこんな合宿に参加してしまったのだろう。

こいつらと一週間も一緒に過ごさなくてはいけないなんて。

初日からこんな感じなんて、先が思いやられる……。


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「なぁ彩子(あやこ)。頼むよー。1日1万。一週間で7万出るからさ」

私、佐々木(ささき)彩子が彼氏の市川俊輔(いちかわしゅんすけ)にこう頼まれたのは、一週間前だ。

私も彼も同じ大学の教育学部で、教師を目指している。

アルバイトも同じ塾講師をしており、私は大手の進学塾、彼は個人塾に勤めている。

俊輔の頼みとは、彼が勤める「みなみ塾」の夏期合宿に、講師として参加することだった。

「無理。つーかあたし他塾の講師だよ?」

「問題ないって。新しい人雇うより、慣れてる人の方が助かるし。うちの合宿は教科ごとの課題制で授業はないから、基本的には生徒の質問に答えるだけでいいから」

私は数回断ったが、私の勤めている塾の夏期講習にもかぶらないし、一週間で7万円というオイシさに負けて承諾した。

塾長であり経営者の南(みなみ)先生と、形だけの面接をしたのが5日前。

生徒も俊輔以外のスタッフも、ほとんど何も知らずに臨むことになった。

会場は県内の合宿場だ。

私が勤める進学塾の合宿とは違い、勉強以外にバーベキューやキャンプファイヤー、花火などもやるらしい。

こんな感じで本当に勉強になるのか甚だ疑問ではあるけれど、教室に詰め込まれてひたすら鉛筆を握るだけの合宿より、楽しそうだとは思った。