「美音は、よく“お姉ちゃんとの約束だから”って言っていました」
泣きそうに瞳を潤ませながら。
「“お姉ちゃんを忘れないために、あたしは神様に声を捧げたの”って」
何を話したいのか、よく分からなくなってきて思考回路を整理するかのように手を頭に当てて、眉間に皺がよる。
「“お姉ちゃんが忘れないでって言ったから忘れちゃ駄目なの”」
きっと美音なら無理にそう思わなくても一生さやかさんのことを忘れなかったと思う。
思い出の欠片すべてを宝物のように覚えていたと思う。
だけど、美音が忘れないために、と自分に暗示をかけるたびに俺は“忘れない”ってことが義務のようになってしまう気がしていた。

