翼を失うってこういうことなんだ、とあの時ぼんやりと考えてた。 救急車に運ばれるときも 治療を受けているときも ベッドに寝かされたときも ………足が折れた瞬間も、 試合のレギュラーの為の練習から帰る途中、低いうなり声をあげ、黄色く光る目をぎらつかせながら突進してきた怪物に 翼を、もぎ取られた。 妙にゆっくりと時間が流れて 空中に浮かんだ自転車も 飛ばされた俺も まわりの人も 全てがぼんやりとしてた。 ただ、 身体中に響いた翼をもぎ取られる音は鮮明だった。