教室の扉が閉まり、足音が遠退く。

室内に静寂が戻り、自分の落ち着いた鼓動を感じられる。

中山は私が前向きでないことを察して答えを求めるのをやめたのだろう。

私がノーと言ってしまえば中山はあれ以上踏み込めなくなるし、私は告白されたことでこれまで恋愛対象として見ていなかった彼をそういうふうに見てしまうことになる。

賢い選択だ……なんて分析できるほど、自分が冷静であることに少し驚いた。

淳一はどうしてこの教室に現れたのだろう。

普通に考えればただの巡回だろうが、まるで狙ったかのようなタイミングだった。

もしかしたら、私にはもう興味がないことを念押しするためにあの場に現れ、それを見せつけるように去ったのでは。

……などと考えてしまうくらいには、淳一が絡むと、私はどうも冷静になれない。

私なんかを好きだと言ってくれる男の子がいたのが、こんなにも心の支えになるとは思わなかった。

しかも、中山だ。

私にはもったいないほどのお相手である。

「じゅん……」

小さな声で呟くと、静かな教室に軽く響く。

私は彼を忘れるだろうか。

例えば、私を好いてくれる人に愛されてみたりすれば。

しばらくそんなズルいことを考えてみたりしたが、あっさり教室を去っていった淳一の顔は、私の心に強烈に焼き付いたままだった。