先生の秘密


「先生も変わらないですね」

教頭らしくないという意味で。

とは言わない程度には大人になった。

ところが元担任こと現教頭は違う意味で捉えたようだ。

「老けない男だからな、あっはっは! 秘訣を聞きたいか?」

「結構です」

「まあ聞けよ」

そしてその秘訣とやらを勝手に語り始める。

本当に相変わらずだ。

「しかしもう3年も経つのか。おととい卒業した気がするのに」

「年をお召しになると、1年が短くなると言いますからね」

「うるせーよ。そういや今でも中山と続いてるのか?」

「秘密です」

「まったく生意気な教育実習生だな。厳しく指導してやる」

そこまで話をしたところで、職員室に到着した。

私は今日からしばらくの間、母校で教育実習を行う。

教頭に促され、他の実習生と共に職員室へ。

現職の教師たちに挨拶をしながら見渡してみる。

顔ぶれはあまり変わっていないようだ。

ただし、彼の顔は見当たらない。

「えー、今日から教育実習で来られた学生さんたちです」

教頭が私たち実習生の紹介をしてくれた。

今回共に実習を行う6人中、4人がここの卒業生で、ひとりを除いては私の同級生でもある。

3年前まで通っていた懐かしさはあるものの、生徒として通っていた頃とは違って見えるのが不思議だ。