先生の秘密


「さくら?」

電話をかけた相手が到着した。

さっきメッセージが来たとき、返信でここに来るよう私が言ったのだ。

「……中山か」

「奥田先生……」

雄二は私と淳一が何を話していたのか察しているだろう。

そして淳一もそのことをわかっている。

雄二が私の横に並び、淳一と向き合った。

私が雄二をここへ呼んだのには理由がある。

淳一に、ちゃんと気持ちを伝えるためだ。

「私、雄二と付き合うことにしたの」

“デーティング”ではなく、“ボーイフレンド”として。

山下公園でデートした日、雄二が提案したのは別れではなく進展だった。

私はどちらが提案されたのかわからない状態でイエスの返事をしたけれど、進展を提案しただろうことは薄々わかっていた。

だって雄二は、いつも私のことが大好きなのだと表現してくれているし、誰よりも私を大切にしてくれている。

私は過去の恋人を追いかけるより、今の恋人に愛されることを選んだのだ。

対外的にはとっくに付き合っていることになっているから「何を今さら」という感じかもしれないけれど、私たちの機微を感じ取ってくれたのか、淳一はただ笑ってこう言った。

「そうか。怒らすと面倒くさいからな。気を付けろよ」

淳一の軽口に、雄二も笑顔を返す。

「それはもう承知してますよ」