先生の秘密


胸がきゅうっと苦しくなる。

「再会したとき、こうしたくて仕方なかった」

私もこうしてほしかった。

こうなると期待していた。

「でも、どっちのためにもならんと思って我慢しとった。だから突き放した」

私はあの日淳一に言われたことで傷ついたけれど、彼の判断は正しかったと思う。

結果的に学校にはバレてしまったけれど、あの日彼に距離を取られていなかったら、私はきっと調子に乗っていた。

そして悪い形でバレて、もっと嫌な思いをしていたかもしれない。

「別れてもずっと好きやった。会いたかった」

それが聞けただけで救われた気持ちになる。

だけどやっぱり、だったらこっそり愛し合いたかったという思いも捨てきれない。

だって、私なら誰にも秘密にできたと思うもの。

互いに触れたまま、少し体を離す。

情けない泣き顔を晒すのは恥ずかしいけれど、この距離の彼を目に焼き付けておきたい。

「会ったら会ったで、余計辛かったけどな。さくらのために教師やめたろうかなって、本気で何度か思ったよ」

淳一は笑ってそう言いながら、涙を拭いてくれた。

「大袈裟だよ。でも嬉しい」

だって私も、ずっと好きだったから。

別れても好きだったし、会いたかったから。

会ったら余計に辛くなったし、学校を辞めてやろうかと、私も本気で思ったから。