先生の秘密


「結果、就職先の生徒だったわけか。濃い偶然だね」

私が笑うと、淳一も笑った。

「ほんまやな」

こんなこと、普通ありえない。

出先で出会った人に強烈に惹かれたことも、期間限定で付き合ったことも、泣きながら別れたことも、学校で再会したことも。

淳一とのことは何もかもが劇的で、嘘のようだった。

「私がこの学校の生徒だとわかったとき、じゅんはどう思った?」

私の問いに、淳一は迷わず答える。

「ショックやった」

えっ……ショック?

胸がズキンと痛み、目がつんと熱くなる。

こんな形でも、私は淳一と再会できて嬉しかったのに。

「ひ、ひどーい。そんなに私に会いたくなかったの?」

気を付けたけれど、声は震えてしまった。

せめて涙が溢れないよう、軽く上を向く。

体育祭の前日、私を忘れられていないと言ったのは何だったの?

「ちゃうよ。そうじゃない」

「だってショックって」

「さくら」

名前を呼ばれた次の瞬間、素早く淳一が近付いてきて、ふと視界が暗くなった。

人肌の温度と締め付けられる感触、そして彼特有の匂い。

抱きしめられているとわかった瞬間、涙は溢れてしまった。