「俺な、教員採用試験、二校受かってん」
「うちの学校と、もうひとつってこと?」
淳一はこくりと頷く。
「実家から通える兵庫県内の高校やねんけどな」
「だったらどうして横浜まで来たの?」
新しい土地で独り暮らしをしてみたかった?
それとも、うちの学校のほうが勤務条件がよかった?
それとも……。
妙な想像が頭に浮かんでいる。
期待と言ってもいいかもしれない。
もしそれが叶ってしまったら、彼への恋心を抑えることに耐えてきた自分のプライドが崩れそうな気がして怖い。
彼の答えを聞かないわけにもいかない。
「いつか偶然、さくらに会えるかもしれんと思った」
頭に浮かんでいた通りの言葉だった。
淳一は、私に会うために横浜へやって来た。
それはとても嬉しいことであると同時に、絶望的でもある。
恋愛とはお互いが好き合ってさえ美しく成り立つものではないのだと、改めて突きつけられた。



