私はあまりのショックに言葉を失った。
私の存在が不都合なのは理解している。
だけど、そこまでしなきゃいけないの?
私にとって、淳一との思い出は心の支えと言っていいほどの大切な宝物だ。
それなのに、淳一にとっては、私との思い出なんて消してしまいたいほどの黒歴史だとでもいいたげだ。
もはや涙を我慢できるわけがなかった。
淳一は私の涙を見ても、たじろぐことなく言い切る。
「それが、お互いのためやと思う」
「もう別れてるのに? やましいことなんて、何もないのに?」
淳一は首を横に振った。
「世間はそんな風には見ない。教師やからな。俺は」
たしかに私たちは付き合っている間、教師と生徒には許されない行為にも至った。
だけど好き合っている恋人同士であれば自然なことだ。
私たちはなにも悪いことなんてしていない。
そう思っているのは、私だけなのだろうか。
「俺らのこと、黙ってられるか?」
私は涙を拭いて答える。
「うん。黙ってる。約束する」
「友達にもやで。相談とかもなしやで」
「わかってるってば。信用してよ!」
私の訴えに、淳一は首を縦には振らない。
「……女子高生は、得体の知れん生き物やからな」
信用すらしてくれないなら、いっそのこと大声で言いふらしてしまおうかとすら思う。
それでも私は彼が好きだから、彼の迷惑になることはできないだろう。
後から罪悪感に押し潰されるだろうことも、容易に想像がつく。



