あれ・・・さっきいたと思ったのに・・・
暗い中、部屋から見えた人を探す。
見つからずに肩を落として家の中へ入ろうとした。
ぐいっ・・・
「ひゃあ・・・」
後ろから腕を引っ張られ、大きくて温かい腕の中に閉じこめられる。
驚いたけど、この腕は知ってる。
陸が肩口に顔を埋めて呟いた。
「杏、ごめん・・・怖い思いさせて。」
腕の力が強まり、ギュッと抱きしめられる。
ふわりと陸の甘い香りが、あたしを包んだ。
「バカ陸。・・・すっごく怖かったんだから。」
陸の服を握りながら言う。
ごめんと謝りながら、さらに抱きしめる。
「なんであんなことしたの?」
聞けないようなことも、この腕の中からなら聞ける。
「苛ついてた・・・ナンパしてきた男に」
「なんで?陸はなにもされてないでしょ?」

