地味子の秘密 其の壱 VS黒羽の大妖怪




あれ・・・さっきいたと思ったのに・・・



暗い中、部屋から見えた人を探す。



見つからずに肩を落として家の中へ入ろうとした。




ぐいっ・・・




「ひゃあ・・・」

後ろから腕を引っ張られ、大きくて温かい腕の中に閉じこめられる。


驚いたけど、この腕は知ってる。




陸が肩口に顔を埋めて呟いた。


「杏、ごめん・・・怖い思いさせて。」



腕の力が強まり、ギュッと抱きしめられる。




ふわりと陸の甘い香りが、あたしを包んだ。





「バカ陸。・・・すっごく怖かったんだから。」


陸の服を握りながら言う。



ごめんと謝りながら、さらに抱きしめる。




「なんであんなことしたの?」



聞けないようなことも、この腕の中からなら聞ける。



「苛ついてた・・・ナンパしてきた男に」



「なんで?陸はなにもされてないでしょ?」