臆病なサイモン









今んとこ、俺が唯一の「話し相手」ってトコ。

ダチ、なんて生意気言わない。

そんな図々しくなれねーし、第一、俺そんなポジティブじゃないから。


…あ、なんか言ってて悲しくなってきた。




「別に。俺も今日は早く帰るつもりだったからさ」

なんてウソー。

別に大した理由なんかない。
さっきの誤魔化しを「マジ」にする為についただけ。

まだ家族の「黒髪」とはイマイチだけど、早く帰って顔を合わせることくらい、一度なら我慢できる。



『ただのコンプレックス』

自分の視界をたまに掠める透けるようなキンイロが、頭悩ませるほどのもんじゃないと感じ始めたのは、ほんと昨日今日のこと。

俺の深刻な悩みをチープな物言いで一蹴するダンゴのお陰かもしれない。


…あー成長してるわ、俺。



「そか」

俺のちっちゃなウソに、ダンゴは素っ気なく答える。
そんでまた教科書と睨みあって、ブツブツ言い出す。

いつもいつもお団子ヘアにしてるから、項でそよぐ後れ毛にはもう慣れた。



「…ださいおさむって誰?」

バカなこと口走る年相応のその横顔には、「秘密」なんてもんは見えないけどさ。