コンプレックスの塊からすれば、自分を取り囲む人間は皆がみな素晴らしく優秀な生き物に見えたし、それと比較した自分といったらもう、最も劣悪で不出来な失敗作に思えていた。
もしそんなやつらに俺の汚い「中身」が流れちゃったら、もう、ダメだ。
バカにされて見下されて、憐れまれて、ジ・エンド。
俺にはなにも残らない。
―――そん時だ。
クラスメートのその女子。
話し掛けられて、なんやかんやと話題を持ち出されても、俺はただ頷いたりするだけ。
彼女の顔色を窺いながらも、固まったまんまの表情筋にそれは表れない。
なさけねーよな。
ただ、チラチラと俺のキンパツを見る彼女の視線が、痛かった。
そんで、…なんでだったかな。
その子に手を握られそうになったわけ。
その仕種がスローモーションで見える。
―――もう、さ、包丁を突きつけられたような気分だった。
彼女は賢い女子だった。
触られたらきっと、なにもかも伝わってしまうと、触れる直前の、その一瞬に怯える。


