『サイモンくん』
確か冬のクラス会。
その当時のクラスでも目立つ女の子が話し掛けてきた。
それが嬉しかったのか怖かったのか、その時の心境はあまり覚えてない。
彼女は綺麗な黒髪で、垢抜けない日本人顔が可愛かった。…気がする。
さらさら靡く大人びたような黒髪が、妙に俺を威圧してたのだけは覚えてるけど。
つまんなねーことにビビってばっかだけど、たただそん時は必死だった、毎日。
俺のキンパツとは違う、純粋な黒。
墨汁なんかよりずっと深い、俺の妹や母親、父親と同じ「日本人」の色。
俺のキンパツは、いけない色なんだ。
俺が「ダメ」なのは、きっとキンパツだからだ。
バカだし、臆病だし、被害妄想は激しいし、…なにをしても、みんなより劣ってる。
みんなと同じように喋れない。
みんなと同じように遊べない。
みんなと同じように、甘えられない。
みんなと同じように、「お父さん」て、呼べない。


