(…なんか、ゼータク)
青春の汗を流しているだろう部活生をよそに、俺とダンゴはふたりして誰も来ることのないこの場所でのんびり涼んでいる。
誰も、この屋上には来ない。
この屋上に俺達が居るなんて誰も知らない、考えもしない。
世界でたったふたりぼっちにでもなった気分。
て、こーゆーのを言うんだろうか。
目の前に広がる少しくすんだような午後の空が、リアルを忘れさせる。
(…でも、)
―――遠くからは車のクラクションが響いているし、野球部の掛け声はは相変わらずうるさいのに。
忽然と、この地球上に住む「その他」の人間が居なくなってしまったような錯覚に陥った。
(世界でふたりぼっち…)
最近の音楽チャートにでも上がってきそうなタイトル。
くだらねーな、なんて思いながら、やっぱりちょっと現実味が湧かないのは空のせいか屋上のせいか、…ダンゴのせいか。
(たぶん、ぜんぶだ…)
この時の俺、浮遊感を伴うような安堵感と、心臓の底を蒸すような孤独感が同居してた。


