クラスの学級委員をやっていた人気者の男子がぽつりとそう口にしたのは、もうほんと、台本通りってタイミング。
教師も生徒も親もいる狭い教室が、一気に水を打ったように静かになった。
母親の無神経な、よくいえば能天気な顔。
父親の、凍りついた、顔。
そん時のことは、今でもたまに夢で見る。
…あ、ごめんちょっとオーバーだったかも。
うんそう、夢に見るのは嘘。
…それは嘘だけど、あの好奇と疑心の目に曝された瞬間は、ガキの俺には相当キツかったんだ。
居たたまれなくて恥ずかしくて、意味もなく悔しくて、だからといって俺の頭はキンパツ以外のナニモンでもなかったから、だからほんと、そのぐちゃぐちゃになった気持ちを引くるめて丸め込んで畳み込んで、どっかに隠すしかなかった。
隠した瞬間、俺は誰にも勝てない「臆病者」になったわけ。


