臆病なサイモン











「そんなこと考えるくらいなら、いっそオマエも死んじゃえばよか、っぶぶ」



…俺は、ずっと面倒事を避けながら生きてきた。


ダチ関連のトラブルには絶対に首を突っ込まなかったし、とにかくストイック気取って、クールにやってきたんだ。

だから俺、ケンカなんかしたこと、ない。

暴力的なニンゲンは苦手だし、俺自身、誰かを殴るなんて、先日のダンゴが初めてだったくらいで。


だから、今は、…生身のニンゲンを殴った拳が、割れそうなくらい、痛かった。

他人を殴るなんて、どんだけ短絡的なんだよ、なんてバカにしてきたけど。




「…言うなよ」


―――どうしようもなくて、やっちまうことも、あるんだ。

って、今日、知った。


本気で殴られたホンダは、すぐ背後に立っていたスネ夫ファミリーに激突して尻餅を着いてる。

周りの大人数やダチンコ達が、息ゼェゼェ言わせてる俺を見て、ぽかんと口を開けた。

そんな視線を向けられるのも、初めてだ。

ずっと怖いと思ってきた他人からの「そういう眼」は、自分が吹っ切れたあとだとそうは思わなかった。