ストレス発散場所っていえば解りやすい?
まあ、それで的は射てる。
でも、そんなんじゃない。
そんなもんじゃ、ないんだ。
ギィ…。
―――ここは、やっぱ俺だけのフリーダム。
じゃなかった。
バサバサッと青みがかった風に学校指定のプリーツスカートが揺れていた。
金網近く、境界線ギリギリに立つ人物。
その影が、ゆっくりとこちらを振り向く。
「……邪魔なら帰ろうか、ヒヨコのヒト」
屋上の汚れたコンクリの上に一歩踏み出したまま動かない俺に、セーラー服の彼女、ダンゴさんは言った。
俺の青ざめた顔が見えているか、なぁオイ、転入生。
見えてるよな?
だから今のセリフだよな?
なあブラザー、そうに違いねぇよな?
こう……、人をさ、小馬鹿にしたようなイントネーション。
いや、そんなつもりはないかもしんねーけど、俺にはそう聞こえたわけ。
挑発的?っつうの?
これるもんなら来てみろよ、ってな。
で、俺、反射的にトス拾う男。
なんでまたここにいんだよ!?
てハナシは、この際、横に置いとく。
なんかさあ、イライラすんだよな。
腹の底からフツフツくるっつうの?
(この人、俺の隠してるきったねぇ部分、まんま、って感じで)
昨日とは打って変わって、デジャヴの恐怖は不思議と感じなかった。
今はとにかく、目の前のダンゴさん……じゃねぇ、ダンゴにアタック決めることが先決。
つまり、そのケンカ買った。
「ヒヨコのヒトじゃねーし。サイモンだし」
まずはジャブから。
初対面の転入生に、俺らしくなくない?
言わないでくれブラザー、解ってるんだ。
解ってんだけど、でも。
「……でも頭、ヒヨコじゃん」
これにダンゴ、こうキタ。
俺もう止まんない。
「ヒヨコじゃねーよ。ダンゴのくせに偉そうだな、あんた」
で、応戦。
大した攻撃じゃねえよな。せいぜい「勇者が毒を吐いた」くらい。
勇者は毒、吐かねぇけど。
ほんとらしくないな、俺。イライラぶちかまして、なんかアタマおかしいヤツっぽい。
そんなふうに誰かに見られるのが、一番怖いはずなのに。
「……ねぇ、ヒヨコ頭。そのダンゴっての考えついて、わたし見ながら笑いやがったでしょう、昨日の朝」
ダンゴ、「石を投げる」レベルの攻撃。


