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その日のダンゴは、とてもナチュラルだった。
楽しかったら笑うし、嬉しかったら微笑む、気に入らなかったら不細工な顔をするし、腹を立てると眉をしかめる。
それから、悲しいと、泣いた。
ナチュラル・ザ・ベスト。
怖いもんは恐いパチもんホラー映画に憔悴しながらも、俺はそんなダンゴを観察しながら気を紛らわせる。
世界ダンゴ発見。
顔は小さいけど、笑うとエラが張ってちょっとふっくら見えることとか、人の話を聞く時、片眉を上げるクセがある、とか。
(…うん、)
普段のマジな顔してるダンゴも嫌いじゃないけど、今日のダンゴも嫌いじゃないな。
なんちて。
無意識にニヤニヤしちまうのは、多分、ダンゴが本当にリラックスしてるからだ。
いつもは見慣れないそれらの表情に多少緊張しながら、それでも、俺はなんだか嬉しかった。
(…恐いもんは恐いけど)
スクリーンに写り込む不気味な映像は、俺の心臓をバクバク言わせてばかりだけれど、ダンゴの「傷口」は、それ以上のインパクトだった。
今はもう、握っていた手は離れてしまったけれど。


