いとこ?
(…んにゃく?)
それはなんとも普通過ぎる答えであって、ちょっと拍子抜けした俺は思わずオウムになった。
「イトコ?」
繰り返すオウムに、ダンゴは一瞥すら向けない。
白いシーツを被った肩が妙になだらかで、いつもよりずっと弱々しく見えて、内心、焦った。
なんの感情も含まない横顔が、少しだけ、ほんの少しだけ、俯く。
それはなにかを隠すためのポーズなんだろうか。
それともただ単に、顎を引いただけ?
顎を引いた引力によって、よれたシーツが屋上の床をでこぼこに滑る。
壊れかけたタイルに視線を置いたまま、ダンゴはちょっとだけ口をつぐんだ。
ポーズか反射か、―――俺には、解らない。
「…母さんの妹の息子が、あいつなんだよ」
―――ゾワワッ。
ダンゴの口から、「母親」を指す名詞が出てきた瞬間、全身の毛穴が縮み上がった。
…しまった。
後悔しても、もう遅い。


