門限を過ぎてからの帰宅。
玄関を開けると父が待ち構えていた。

これまでにも同じような場面が何度もあった。すっかり慣れっこなあたしは何も言わずに靴を脱ぐ。


「遅れた理由くらい言いなさい」


低くて、鈍く響く父の声。

あたしは答える代わりに小さくため息をつく。

それが父の怒りをさらに煽った。


「近頃のお前は何なんだ!構えば歯向かう、放って置けば調子に乗る!」


確かに両親があたしを放って置くようになったのを良いことに、あたしは自由を謳歌していた。

今のままならまだ楽なのに。父はあたしを自由にはさせてくれない。