あ………。 しまった、と、あたしは慌てて口を噤む。 別に悪いことじゃないのに。 口からぽろりと“お父さん”という言葉が出てきて、急に恥ずかしくなってしまった。 「奈緒……」 あああああぁぁぁ。 ほらほらほら~。 もう涙目になってるし。 そして、また言うんだ。 「もう一回……」 絶対に言わない。言うもんか。 「……早くお弁当作ってよ。遅刻するから」 あたしはひどく落ち着き払った態度でそう言うと、泣き出しそうになっているお父さんを残して自分の部屋に戻った。