その映画はケータイ小説をもとにしてつくられた恋愛ものだった。
最後のシーンでほろりと涙が頬を伝った。
ふと隣にいる翼くんを見ると、その視線に気付いてくれて、優しく微笑んでくれた。
それを見て、ちょっぴり照れた。
映画館を出ると、二人組のカップルが目の前を通った。
その女の顔を、あたしは知っている。
「……なんで」
――許せない。
次の瞬間、あたしはその思いのままに走り出していた。
女の肩をつかんで振り向かせた。
「は!?なに……!?」
「准(じゅん)」
「……花垣葵……?」
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