結局、翼は見つからなかった。

教室に行ってみても、いなかった。


「あれ?葵、おはよ」

「おはよう花音」


そっか、もう花音がいてもおかしくない時間なんだ。


「かばん置いてあったから学校にいるのは分かってたんだけど、どこに行ってたの?」

「え?あ、翼探してたけど、いなかった」

「まぁまぁ、翼のヤロー探すよりもあたしといた方が楽しいって」


今、ヤローって言ったよ花音。

ヤローって。


「久しぶりに会ったわけだしね」

「って言っても一週間くらいだけどね。あれから柚縷ちゃんどう?」


まだ気まずいままなのかな?

でも、恋が消えにくいのも事実。

あたしも泰斗くんへの気持ちが消えるのに二ヶ月もかかったもん。


……いや、あれは怒りが治まるまでの期間かな?

准のことを見直したと言っても、准があたしに残した思い出にはすさまじいものがある。