トントン…ガチャ。
遠くで物音がするのが、意識の隅っこで分かった。
アタシはバッと体を起こす。ヤッベ……寝ちゃったよ。どうしよ。
「ただいま。……ってか、何今の起き方、可愛くねー。オッサンか」
「うっせー……お、かえり。」
まだ半分寝ぼけ眼なアタシから、ヒカルはちゃぶ台の菓子折りに目線を移す。
まずい、本当にまずい。
「苺、何?……これ」
少しの沈黙の後、ヒカルは尋ねる。多分、何となく察しているのだろう。翡翠色の瞳の奥で、『違う』と言ってほしがってるのが分かる。
でも、アタシ、嘘つけないタイプなんだ。だから気の利くことが何も浮かばない。
「なに?」
もう一回、ヒカルに尋ねられてアタシは正直に答えるしかなくなった。



