【完】ひとつ屋根の下で。

アタシはヒカルの背中に近付く。



だけど、抱きしめてはいけない気がして、触れる一歩手前で止まった。



震えるヒカル。



何もしてやれないアタシ。



だから心の中で、言った。



『泣かないで』



心の中で、何度も、何度も。その声は、ヒカルに言葉として伝えないと、伝わらないというのに。アタシには、出来ない。



立ち尽くすアタシに、先に触れたのはヒカルだった。



「ゴメン……怖がらせた。ゴメンな」



この間みたいに、強く頼りがいがある抱きしめ方じゃなくて、まるで、子供みたいに、縋るような弱い腕。



「アンタは、俺に何か聞きたくないのか?」



ヒカルは不安そうな声で尋ねた。



聞いたって、答えれないだろ、そんな状態で。