【完】ひとつ屋根の下で。

そのヒカルの、綺麗過ぎて怖いくらいの真顔が、ゆっくり、ゆっくりと近づくのが分かった。



部屋は静か。掛け時計の、カチカチ、と秒針の動く音だけが響く。



近づく、やはりアタシとは比べ物にならないくらい綺麗な顔。



視界の端っこには、ヒカルの黒縁眼鏡の太いフレームが映る。



だけど、アタシの視界が主に捕らえてるのは、灰色掛かった翡翠色。



ドクン、ドクン。



伝わるヒカルの息がかかる感覚。血管に廻るアタシの血。壊れそうなくらいせわしなく動く心臓。



静かな空間だから、響いてるんじゃないかと心配になる。



鳴りやめ、鳴りやめ、鳴りやめ。そう唱えても、ちっとも止みゃしない。