マンションに帰ると今まで聞こえていた喘ぎ声が聞こえなかった。



「あ、お帰り苺」



麦茶入りのグラスと本を持ったヒカル、がリビングのソファを占領している。



昨日あんなことがあったからか、ヒカルが何気なく言ってくれた『お帰り』に、胸がじわんと温まる。



「あれ、2週間はアタシを妨害するんじゃなかったっけ?」



「んー、気分が変わったの、かもね。カップ麺食う?」



じーっと見ると、ヒカルはなにやら難しい本を読んでいるのが分かる。



「なんだそれ?」



「ああ、これは大学の参考書。医療機器の扱いの」



差し出されて覗いたけどアタシには訳わっかんねぇ。



しかも、ちっせえ字。なんだこれ。