「こんちはー」



東京の首都圏から郊外に出て、少し古びた建物の中に入る。



「君が神尾 苺ちゃん、かな?」



「あ、ハイ。こんちは」


目の前には少し白髪混じりのおじさん。



「武安から聞いてるよ。安い物件を何件用意したから、見てごらん」



優しそうなおじさんに促され私は古いソファに腰を降ろす。



用意された物件は5件。



どれも、首都圏にある職場に近く、立地条件も悪くない。悪くない、が……



「んー……6万円か、初期費用とかもあるし、アタシにはこれじゃ無理かな」



1K8帖、駅も近い。都心に出るにも悪くないし、なかなか安い物件なんだろうが、貯金のないアタシには無理。