【完】ひとつ屋根の下で。

会社を出て、アタシは電話を取出す。



リダイヤルで要一兄にかけると、2コールで通話になった。



『もしもぉし、イチゴ?おはよー。ん?あれ、こんにちはの時間がぁ?』



やっぱりなんだかテンポの遅れた要一兄の声に笑みがこぼれつつ、アタシは返す。



「要一兄、アタシね……明日には、沖縄に戻るよ」



アタシの言葉に、向こう側が、10秒ほどフリーズした。



『いきなりだなぁ、そっちの生活は大丈夫か?大切な人はいないんかぁ?』



アタシはその問いかけに、迷うことなく答える。



「いるよ。だから気づいた。アタシの大切な血の繋がらない家族に」



きっぱり答えたアタシに、要一兄は日だまりみたいな笑い声をあげて笑ってくれた。