【完】ひとつ屋根の下で。

「苺ちゃん、食べながらでいいから、おじさんの戯言を聞いてな」



おじさんは、鯖を突きながら何気なくアタシに言った。



「苺ちゃんの父さん、まあ俺の弟の武光なんだけどさ、事故で亡くなる前日に、東京で飲んだんだ。その時、アイツなんて言っていたと思う?」



アタシが首を横に降ると、おじさんが、ふふ、と笑い話を進める。



「苺には汚い世界を見せたくない。愛情いっぱい育てたいんだ……って、言ってたんだ」



話しているおじさんは、笑ってるのに、涙声になってきている。



アタシも、会ったこともない父さんの言葉に、目頭がじーんと熱くなっているのが分かった。



言葉って、誰しも持ってる、不思議な魔法。相手を泣かせたり、喜ばせたり。