【完】ひとつ屋根の下で。

ヒカルは、喉仏をくつくつ言わせ笑ってたけど、真顔になってアタシの耳元に寄った。



「俺がこんな冗談言うのは、アンタだーけ」



ヒカルの抑揚のない低い声が、アタシをじんわり温かくする。



いつの間にか、ヒカルの薄い唇が、耳にキスして、オデコ、瞼、頬と滑り落ちる。



アタシの唇の数センチ先で、ヒカルの顔が止まった。



「アンタから、キスしてよ。俺からしたら、またアンタの優しさ吸い尽くしてしまうかも、じゃん」



ヒカルの翡翠色の瞳が、優しい光を放つ。



「ねっ?」



今の『ねっ?』は凄く甘えた声だった。微かな音の違いだったけど。



ヒカルは、こうすると女がドキドキするのを、本能的に知ってるんだ、きっと。