けど、出られない。



続いて、後ろにぐっ、と引き寄せられた。



「昨日あんなに大胆なことしたくせに、逃げんの?」



どうやら、アタシの後ろにいたヒカルに捕まってるらしい。



あれ、ってかもしかして、もしかして、なんだけど。



「ヒカル、夜に、寝れた……?」



アタシが『逃げんの』という質問に対し、質問で返すと、ヒカルは引き寄せる腕を強める。



「ん。アンタのおかげ、多分ね」



「ちっ。多分は余計だっつうの。そこは素直に感謝しろ」



アタシはくるりと振り返り、ヒカルを見上げた。



翡翠色の瞳が、真っ直ぐ、優しくアタシを見つめ返す。



まあ、限りなーく、無愛想な顔なんだけどね。