ヒカルは、一度、深い深呼吸してアタシから離れる。



「話す前に、着替えてくる」



「ん……あ、うん」



そういえば、アタシが風呂場で慌てて巻いたバスタオルと、かけたブランケットだけの姿のヒカル。


立ち上がり、ポリポリ、と頭を掻いて部屋に入って行った。



部屋に入るまで見送った背中。でも、本当の目線は、右肩の赤黒い歯形。



ヒカルはアタシを突き飛ばし、怯えた時に、右肩を庇っていた。



ヒカルの心の傷は、あの歯形として形を示しているんだ。



だけどヒカルの心には、きっとあれ以上の、恐ろしい傷と記憶が深く付いているのだろう。



どんな傷だって言うんだ。アンタの背負ってるそれは。