彫るとするならば、公平の事を彫りたい。 だけど、そんな事は出来ない――。 「なんだよ、早く彫れよ」 「うん、わかってるよ。 だけどちょっと待って。今真剣に考えてるんだから」 「そんなの、考える程のもんじゃないだろ?しかもさ、今までの事を思い出したらすぐに彫れるじゃん」 「たとえば?」 わたしが首を傾げて聞くと、 『貸せよ』と、公平に彫刻刀を横取りされた。 公平が、わたしの代わりに机に文字を彫っていく。