イジワルな恋人



薄く笑みを浮かべた萩原先輩の顔を見ながら、そう確信する。


「あんたさぁ、男と付き合った事ないんでしょ?

告った男もみんな振ってるしねー。何様の気か知らないけどー。そんな初心者に亮は無理じゃん?

あたしなんて亮と初めて遊んだ日に持ち帰られちゃったし。

あ、意味わかるよね?」


バカにされたみたいでちょっとムっとするも、特に反抗する気にもならなかった。

黙っているあたしを見て、萩原先輩がニヤリと気味悪く笑う。


「斎藤がね、水谷さんの事好きなんだって。

だから斎藤に慣れさせてもらいなよ。

色々と……ね」


冷静を保っていた気持ちが、その言葉を聞いて初めて動揺した。


萩原先輩の用意したいじめは、あたしの想像するものじゃなかった。

言葉よりも暴力よりも卑劣なモノに、あたしは鞄を抱き締める。


「じゃあ始めよっか」


楽しそうな萩原先輩の声を合図に、二人の女子があたしを両側から押さえつけた。

持っていた鞄はあっけなく地面に落ちる。

それを見ながら萩原先輩は笑みをこぼした。


「斎藤、まずは……やっぱりキスからよね。

じっくり教えてあげてよ」