イジワルな恋人



「悪いけど、水谷さんと二人で話がしたいから遠慮してもらえる?」


心配そうな顔をする梓の声は少し震えていて……あたしは微笑んで首を振る。


「あたしなら大丈夫だから心配しないで」


敵対心を溢れさせて萩原先輩を睨みつける梓にそう言ってから、萩原先輩の後ろを歩きだす。


萩原先輩に連れてこられたのは、旧校舎の裏だった。

旧校舎は実験室とか資料室とか、普段は使わない部屋が集まってるから、人の出入りが少ない。

……やっぱりいじめるつもりなのかな。


いかにもそんな雰囲気の漂う場所に、あたしは顔を陰らせる。

校舎裏にはすでに萩原先輩の友達らしき女子が二人と、一人の男子の姿があった。

……二人で話がしたいって言ったくせに。

そう思いながらも声には出さない。


出来れば、本当に出来れば穏便に済ませたかったから。

……無理だろうけど。