イジワルな恋人



【奈緒SIDE】


「水谷さん」


授業を終えて廊下に出た時、待っていたようなタイミングで後ろから呼び止められた。

振り向いた先には、笑顔を浮かべる萩原先輩の姿があって。

その姿にあたしは小さく息を吐いた。

……来ると思った。

萩原先輩が亮に言い寄ってるのは学校中の噂で、みんなが知っていた。もちろんあたしも。


だから亮との噂が広まればいつかは来るだろうなって覚悟はしてた。


「亮の事で話があるんだけど」

「……今日じゃなきゃダメですか? あたしバイトがあるんで……」

「じゃあバイト先まで行ってもいいけど?」


萩原先輩の強引な言葉に、あたしはため息をつく。


「じゃあバイト先に電話するんで待っててください。

……心配しなくても亮を呼んだりしませんから」


バイト先に休む事を伝えて電話を切ると、教室から梓が駆け寄ってきた。


「奈緒、あたしも行くっ」