イジワルな恋人




それでも女相手に手をだすのは趣味じゃない。

拳を握り締めて由利を睨んでから、由利に背中を向けて歩き出す。


「亮だって本気じゃないなら、別にあたしと遊んだって……あ、それ可愛いっ!」


後ろから絡みついてきた由利が、鞄についたキーホルダーを見つけて声を弾ませる。

そして、伸ばした手で触れようとして―――……


「……―――触んじゃねぇっ!」

「……っ」


屋上に響いた俺の声に由利が体をすくめた。

青ざめても見える由利を睨みつけてから背中を向ける。


「……もう俺に関わるんじゃねぇ」

「……何それ。今までならこんなことなかったのに……」


ドアを閉める瞬間、そんな言葉が聞こえてきたけど、振り返りはしなかった。




放課後までの二時間、学校近辺で時間を潰した。

奈緒がバイトならあのまま帰ってもよかったけど……、由利の事だからもしかしたらあいつに、奈緒に何かするかもしれねぇし。


由利は派手なグループの中でも、常に中心にいた。

意地が悪くて有名で、気に入らない奴を見つけると集団でいじめているような女。

それは教師達の間でも議題になるほど。


……問題児扱いなら、多分俺と並ぶだろぉな。