イジワルな恋人



「あ! 亮!」


いつものように文末にハートマークをつけながら近づいてきた由利に、俺は目も合わせないまま顔をしかめた。

由利は笑顔を浮かべながら寝ている俺の腕にまとわりつく。


「……触んな」


冷たく言って由利の手を振り払う。


「だって、一人でサボってても暇でしょ?

あたし、協力してあげるよ?」


懲りない由利が身体を押しつけるようにして密着させてくるのを、冷たく見下ろしながら立ち上がる。


「俺、彼女できたから。もうここには来るな。

邪魔されると迷惑」


再度腕を振り払って歩き出すと、追ってきた由利の言葉がそれを止めた。


「別に彼女いたってあたしは気にしないよ?

彼女って1年の水谷でしょ? もう学校中の噂だよ。

でも、あいつかわいこぶってるだけだよ。女同士だからわかるけどさー……。

絶対裏じゃ男とっかえひっかえしてるって」


奈緒をバカにするように笑う由利の顔に、俺ん中の怒りの感情が小さく暴れだす。