イジワルな恋人



「佐伯さん……お家の人が心配してるって聞きましたよ」


小さく座り込む佐伯さんに近づいて言う。

本当は声をかけるかどうか迷った。

亮の気持ちを無駄にしたくなかったから。


だけど……、

無視することも出来なかった。あたしの声に、佐伯さんが顔を上げる。


「……心配なんかしないよ」


見上げた佐伯さんが、少しうつろに笑う。

メイクもいつもより薄くて、目の下にはうっすらとクマが浮かんでいた。


「ちょっと話そうよ」


そう言って歩き出した佐伯さんの後ろを、戸惑いながら黙って歩く。


ついたのは学校のすぐ近くの橋だった。

細い川にかかる橋はそれ程大きくはない。

下校時間を少し過ぎたせいか、通る生徒もほとんどいなかった。


しばらく川を眺めていた佐伯さんが話を切り出す。


「あたし……実家帰ったけどうまくいかなくて。親も微妙だし。

なんか腫れ物に触るような感じだし」


佐伯さんの目は、一点を見つめているみたいだったけど……その瞳は定かではなかった。


そんな佐伯さんの横顔を黙って見つめていた。


「……なんで、こうなっちゃったのかな」


視線の先で……佐伯さんの涙がこぼれおちる。