イジワルな恋人



数日後、あたしは予想もしてなかった場所で佐伯さんの噂を聞いた。


「前、水谷が校門でひっぱたいた女って友達か?」


廊下で話しかけてきたのは真ちゃんだった。


相変わらず生徒に人気のある真ちゃんに、すれ違っていく生徒が声をかけていく。


「人聞き悪いな。まぁ、事実だけど……。

友達ってわけじゃないけど……何?」


周りの生徒を気にしながら聞く。


「昨日の夜、防犯パトロール中に見かけたんだよ。

街中で。なんか荒れてそうだったから声かけようとしたら逃げられたけど」


街中って……佐伯さん、戻ってきてるの……?


「それ、本当?」

「ああ、間違いないと思うけど……」


あたしの表情から何か感じとったのか、真ちゃんが顔を歪ませて釘をさす。


「だけど余計な事に首つっこむなよ? 

せっかくかばってくれた桜木の気持ちにもなれ」


真ちゃんの表情に、亮の顔が頭に浮かんで……。

あたしは苦笑いを浮かべて頷いた。


廊下を歩きながら色々考えて……教室に戻ってからケータイを取り出した。


呼び出したのはバイト先。

……せめて店長に教えてあげなきゃ。


――プルルル、――プルルル……

ケータイから呼び出し音が聞こえる。


……荒れてるって言ってた。やっぱり何かあったんだ。