イジワルな恋人



翌日のバイトで、久しぶりに香奈ちゃんと一緒になった。

平日の夕方は学生のお客さんが多くて、いつもより少し騒がしい。


「……佐伯さんどうしてるんですかね」


佐伯さんを嫌っていた香奈ちゃんだったけど、事情を聞いてから、少し気にしているみたいだった。


「……元気にしてるといいね」


ちょうどそんな話をしていた時、店長が慌てた様子で受付に走ってきた。


「水谷っ、美沙に会ってないよな?!」

「あ、はい。……何かあったんですか?」


いつもと違う店長の様子に聞く。

店長が顔を曇らせて……、少ししてから重い口を開いた。


「さっき美沙の実家から電話があったんだけど……美沙、3日前から帰ってないらしいんだ。

あいつの事だし、いつもの事かもしれないけど……。

もし見かけたら連絡するように言ってくれる?」


店長の真剣な表情に、香奈ちゃんと2人で頷いた。


佐伯さん、まさかお家でうまくいかなかったのかな……。

何か、あった……?


佐伯さんの事を思うと、胸がズクンと鈍く痛んだ。


一つの終わった事件が、あたしと佐伯さんを今でも苦しめ続けていて……


出口を見つけるのは、難しく思えて……

唇をかみ締める。