「……おまえ結構泣き虫だよな」


亮があたしの涙を指で拭う。


「ごめん……」


うつむきながら言った言葉を、優しい声で笑われる。


「別に。俺おまえの泣き顔嫌いじゃないし。……でも泣かせるのは好きじゃない」

「亮のせいじゃないよ。あたしが勝手に寂しがって……」


亮は小さなため息をついて、真剣な表情をあたしに向ける。


「邪魔しちゃ悪いとか思って会いに来なかったんだろ?」

「……うん」

「俺、おまえに邪魔なんて言った事あるか?」


真剣な目が少し怖くて……うつむいたまま顔を横にふった。


「……多分おまえが来てくれた方がはかどるし」

「え、なんで?」

「……息抜き?」


亮はそう言って口の端をあげて笑って見せると、伸ばした手であたしの頬に触れて。

そのまま顔を背けられないように固定する。


「違うか。頑張ったご褒美かな。……キスすんの一週間ぶりだな」

「……っ」


そう言って亮の顔が近づいてきて……キュウッと苦しくなった胸に、目を閉じる。


唇が触れそうになった瞬間……、運転席のドアが開いた。


「すみません、遅くなりまして……あ、奈緒様ももういらしてたんですね」


北村さんの笑顔に、あたしは赤い顔で苦笑いして……

亮は不機嫌に窓の外を眺めていた。