「亮、キャバクラに殴り込んだんだよね」

「俺、あの時初めて女の為に殴られたんだからな」


亮の言葉に、笑みをこぼす。


「乗れよ。北村もすぐ来るから」

「……うん」


久しぶりの2人きりの空間が嬉しいのに、同じくらい感じる緊張が身体を強張らせる。


「一週間何してた?」


亮が優しく微笑んで聞かれて……、あたしはうつむいた。


「奈緒?」


呼びかける亮の声に……、苦しくなりながら重い口を開く。


「……寂しかった」


素直な気持ちに、亮は驚いた表情を浮かべて……でもすぐに優しく笑った。

そして、あたしを抱き寄せる。


「それが言わせたかった。俺だけじゃなくてよかった……」

「……っ」


亮の言葉に……、我慢していた涙が溢れた。


亮の香り。

亮の腕。

亮の声。

亮の体温……。


たった一週間なのに、それがないだけで、全然足りなかった。

亮がいないだけで、いつものあたしになれなくて。


強がって1人で頑張ってきたのに……。

亮に逢って、いつの間にかそんな自分はいなくなってた。


亮がいなくちゃダメになってた―――……。