「もぉっ! あたし真剣なのに……っ! こんな時に何考えて……」
「こんな時だからだろ?」
亮の言葉に……、身体を少し起こして亮を見る。
「こんな時だから、奈緒と一緒にいたいんだよ。……触れてたいんだよ」
「……」
「俺のわがまま、聞いてくれねぇの?」
優しく笑う亮に……、
戸惑った後、ゆっくりと頷いた。
これからの事を思うと、不安だけが浮かんで怖くなった。
佐伯さんの事も、亮の留年の事も、何も解決なんかしていなくて……。
考えただけで不安で……。
だから、その日は亮の顔を見つめていた。
亮だけを……。