イジワルな恋人



「あの桜木から相談されるなんて思ってもみなかったよ。

桜木だって、俺なんかに相談したくなかったハズなのに……本当に水谷が大事なんだな」


目の奥が熱くなったのが分かって……目をつぶった。


……泣かない。

絶対泣かないよ……。


あとで、亮の前で思いっきり泣いてやるんだから。


1人でカッコつけないでって……、

今度はあたしが説教してやるんだから……。


亮のばか……。

……ばか。


どうかしてるよ……。






「奈緒! ……桜木先輩の所行くの?」


教室に鞄を取りに戻ったあたしを、梓が呼び止めた。


「……うん。先生に、」

「まかせて! うまく言っておくから」


笑顔で送り出してくれた梓が、心を後押しする。


「ありがと!」


それだけ言って、走って校舎を後にした。