「……亮はなんで、佐伯さんの事先輩に話したんですか?」
まだ呆然としたまま、中澤先輩に聞いた。
あの後、亮の事を聞きつけた生徒達が興味本位で職員室前に集まりだして……人目を避けるために、屋上入り口前の踊場に移動した。
本降りになった雨が、屋上のコンクリートを打ち付けている。
亮の特等席が……雨で濡れていく。
「……この前相談されたんだ」
「相談? ……亮が?」
驚きを隠せないで言うと、先輩が笑う。
「水谷が驚くのも無理ないな。
桜木が俺を嫌ってるのは分かってたから、あいつが教室に来た時、俺もびっくりした」
静かな校舎内に、雨の音が響く。
さっきまでの笑顔を消して……、先輩が真剣な表情を浮かべて目を伏せる。
「……あいつさ、水谷の過去の事を言いふらそうとしている奴がいるって心配してて……。
どうすればおまえが傷つかずにすむかって俺に聞いてきたんだ」
黙ったまま、先輩の話を聞いていた。



