翌日、悩んだ末、中澤を呼び出した。

屋上のドアを開けた中澤は、俺を見るなり迷惑そうに顔をしかめる。


「俺、授業サボったの初めてなんだけど。

よっぽどの話じゃなきゃ戻らせてもらうからな」


そう言ってドアを閉めた中澤に、背中を向けたまま返事をする。


「……おまえが大事にしてる奈緒の事だよ」


その言葉を聞いて、中澤が少し距離を置いたところに座った。


「なんだよ。水谷の事って」

「本当はおまえなんかに話したくねぇけど。悔しいけど、俺よりあいつの事分かってるだろうから……」


そう前置きしてから。本題を切り出した。


「……おまえ、あいつが記憶失ってる時の事知ってるか?」

「ああ……。中学ではかなり噂になったからな」

「じゃあ、その間に、奈緒が犯人の川口と会ってたことは……?」


中澤が、驚いた表情を浮かべて聞き返す。


「……それ、本当か?」


黙って頷くと、中澤は少し黙ってから思い詰めたような顔をして話し出した。


「……実は俺の父親刑事でさ。あの事件があって半年くらいした時に聞いたんだ。

川口がそう言ってたって。

信憑性にかけるし、なんの根拠もないから多分嘘だろうって……」


視線を伏せたまま離す中澤を横目で見る。

昨日の雨が嘘のように眩しい太陽が目に入って、目を細めた。